指から伝わる温度が心地よくて



「殿下ー、起きてください殿下ー」
エトナが棺桶で寝ている自分の主を起こそうとする。お馴染みの光景だ。
「・・・・・・」
そしてラハールが起きないのもお約束のこと。
「・・・ったく、ホント起きないわよねこのクソガキ」
悪態をつくエトナ。毎度のことでも腹は立つらしい。
「あ―・・・マジで殺したくなってきたわ・・・」
呆れと殺意が芽生えた瞳でラハールを見下ろすエトナ。
「・・・・・・こうやってみると・・・本当に死んでみたいね・・・」
そして眠るラハールを見て呟いた。

(・・・・・・・・・もしかしたら殿下は今、この場所にいなかったのかもしれないのよね・・・・・)

それはまだ天使見習いだったフロンが現れる前のこと・・・。
エトナは自分の記憶を取り戻すため、ラハールを毒殺しようとした。だがそれはのちに利用とする考えと変わり、エトナは眠っていたラハールを起こそうとした。
もしかしたらその時にラハールのことを殺していたかもしれない。
エトナは、起きないラハールのことを見てそう考えていた。
そして何を思ったのか、自分の手を眠っているラハールの手にのばし・・・、



やさしく、握った。



その手から伝わってくるのはかすかなあたたかい温度。

―――それは紛れもなく生きているという証拠―――。



「・・・・・・あーあ・・・あたし何やってんだろ」
ラハールの手の温度があたたかいことに安堵し、同時に今自分が行った行動が馬鹿馬鹿しくなったエトナ。握っていた手をすばやく放した。



―――殿下は生きてちゃんとココにいる―――。



そう考えるエトナ。
ラハールを見つめる瞳はいつの間にか優しいものになっていた。



「さて・・・と・・・。でーんーかー!起きてくださいってば!ホントに殺っちゃいますよー?」
エトナは再びラハールを起こそうとする。



この温もりを消してはいけない―――。



そんな思いを抱きながら―――。





−あとがき−
『長文で【初心者】3のお題 - girls の01.指から伝わる温度が心地よくて』でした。
『指』だってのに手を握ってるぜ? ってツッコミはなしでお願いしますです(^^;)
エトナがエトナじゃないーっ;
ひっー;;
はっ、はずいのでいろいろと放棄して逃げます!





2009/02/08