「いいですかエトナ? 寂しい時や悲しい時は・・・」
「魔王様・・・?」
「手を繋ぐといいですよ」
「・・・ほんと・・・だ。なんだか・・・安心する・・・」



今ではずっと昔に感じるこの記憶―――。



無言でつないだ手は、大きくて暖かくて安心できる場所



「殿下ー、ちょっといいですかー?」
エトナが陽気な声でしゃべりながらトトトッとラハールに近寄った。
「エトナか。一体オレ様に何の用事だ?」
「えっとですねー、大した用事じゃないんですけどー・・・」
「ならいちいち騒ぐな! オレ様は忙しいのだ!」
「まぁまぁ殿下落ち着いてくださいよー。用事って言ってもすぐ済む用事ですし」
「すぐに済む用事だと?」
「はい」
エトナの意図がわからずに首を傾げるラハール。
「殿下、手をだしてくださいよ。手」
「・・・は?」
そして更に意味不明なことを言われ疑問符を出しまくるラハールだが、エトナはそんな主の様子などお構い無しに、
「手、です。それとも殿下・・・言葉がわからなくなるくらいバカになっちゃったんですか? ついに?」
「バカとはなんだ!! しかもついにとは一体どういう意味だ!」
「冗談ですよー冗談っ。んじゃ言葉がわかる殿下、手をだしてくだい」
「・・・何か気にくわんが・・・これでよいのか?」
ラハールは腑に落ちないまま、無造作に自分の手をエトナの前に差し出した。
「まったく・・・手が一体なんだというのだ。いつにもまして意味がわからんぞ・・・」
そしてぶつぶつと呟く。
「おいエトナ。それでオレ様の手になんのようだ。気になるだ―――」
『気になるだろうが』と言うとしたラハール。だが、その台詞は・・・

「・・・・・・」

エトナの無言の行動によって語られることはなかった。


・・・・・・エトナが、ラハールの手を無言で握ったから―――――――――。



「っ・・・!? いっ、いきなり何をするのだお前はっ!!?」
自分の手に何か暖かな感触があり、それがエトナの手だとわかった瞬間ラハールは大慌てでエトナの手を振りほどいた。気のせいか、顔が赤い。
「あっ、ビックリしました?」
「すっ、するわッ!!」
慌てふためくラハールとは対照的に何もなかったかのように話すエトナ。
「別にたいしたことじゃないんですけどもね、昔魔王様に・・・あっ、この魔王様ってのはもちろん殿下のことじゃないですからね」
「・・・・・・わかっておる」
エトナが指す魔王様―――つまりはラハールの父親であったクリチェフスコイのことであり、この話題が出たとたん無意識のうちに不機嫌顔になったラハール。
「それでですね・・・あたしがまだ小さかった頃、あたしを安心させてくれるために魔王様が手をつないでくれたんですよ」
「・・・・・・・・・」
遠い昔の記憶を思い出しているのかいつもとは違う大人びた表情になるエトナ。そしてラハールはそんなエトナを、相変わらずおもしろくなさそうな顔で見ている。
「で、魔王様のように殿下と手をつないでも安心できるのかなーって思ってつないでみたってわけですよ」
先ほどの行動の意図をあっけからんと言い放つエトナ。
「なっ・・・! そっ、それだけの理由でお前はあんなことをしたのか!?」
対するラハールは、エトナと手をつないだ(つながれた)時の感触を思い出し、先ほどの不機嫌顔は何処へやら・・・再び顔を赤く染めた。
「あんなこと・・・って・・・ただ手をつないだだけじゃないですか」
「う゛っ・・・」
「・・・あっれー? 殿下ってばもしかしてまともに女の子と手をつないだことないんですかー? ウブですねぇ〜♪」
「だっ、黙れ! だいたい貴様はいつもいつも唐突すぎるのだ!」
「そんなことはないと思いますけどー?」
―――そしてすっかりエトナのペースに巻き込まれるラハールだった・・・。



「・・・・・・それで・・・結局のところどうだったのだ・・・?」
「どうって・・・何がです?」
「・・・っ・・・おっ、お前がさっき言っていたことだ!!」
「あ〜・・・。あの安心するかどうかってことですか・・・。殿下、気になるんですか?」
「ばっ・・・バカなことを言う暇があったらさっさと教えろっ!!」
「相変わらず素直じゃないですねー。まぁ・・・今に始まったことじゃないんでこの際気にしないでおいてあげますよ」
「・・・・・・・・・」
「そんな睨みつけないでくださいよー。今いいますから。えっとですねぇ〜・・・」

エトナは考える。
―――先ほど自分が想ったことを・・・。そして出てきた言葉は―――、


「まだまだってところですかねぇ・・・」

曖昧な答えだった・・・。



「・・・・・・なんだそれは?」
「殿下はいつまでたっても未熟者ってことですよ♪」
「何っ・・・!? おいエトナ! どういう意味だ!!」
「さぁ?」

すっとぼけるエトナに苛立つラハール。そのため、エトナに向かってラハールは叫ぶが当の本人であるエトナはそんなラハールが面白いのか、クスッと微笑む。



(クリチェフスコイ様に比べればまだまだかもしれないけれど・・・それでもあたしにとってはもう十分な程安心できる場所なんですよ・・・殿下)



自分の本当の気持ちを心の中で呟きながら―――――――――。




−あとがき−
・・・という名の解説エリアです(殴)
ってことで『長文で【初心者】3のお題 - girls の03. 無言でつないだ手は、大きくて暖かくて安心できる場所』でした。
えーっと・・・エトラハ・・・というよりはラハールが1人でただただうろたえてる話になったような気も・・・。気・・・っていうかまんま・・・(苦笑)
エトナにとっての魔王はやっぱりクリチェフスコイで、それを知っているラハールはやっぱりどこか不機嫌になったりして・・・
な関係が好き・・・かなぁ(´v`*)
で、最後のエトナの台詞は・・・なんだかんだでラハールの隣にいることはエトナにとって安心とかできる場所だといいと思います。ハイ(思いますかよ
・・・うん。相変わらず文がまとまっていない・・・な ! !(失笑)
・・・・・・・・・そして悪魔って手を洗わな―――(女性除く?)・・・・・・まっ、いっか(待)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。





2009/03/15