「殿下って一向に背、伸びませんよね」

それはエトナの言ってはいけない一言で始まった―――。



見上げて笑えば、彼も笑ってくれて



「エトナ・・・どうやら貴様は今すぐこの世から消えたいらしいな・・・?」
魔王城の中にある階段を上がろうしたラハールに後ろから声をかけたのは家来であるエトナだった。そしてあろうことかラハールに対して禁句ともいえる“背”の話題を持ち出したのだ。もちろんそれを聞いたラハールは、ギロリとエトナをにらみつける。その瞳は殺気に満ちていた。が・・・、
「相変わらず気にしてたんですねー。殿下に魔王としての威厳がないのは、その背が原因の1つだったりして・・・」
対するエトナはひるむことなくクスリ、と笑った。
「ぐっ・・・! お前な・・・さっきから言いたい放題しゃべりおって・・・!」
このようなエトナの口が減らない態度にさすがのラハールも呆れた。もはや怒る気も失せたらしい。
「でも殿下ー、事実じゃないですか。ほら。実際あたしよりも数十センチ低いですし」
そしてさらにエトナはお構い無しにラハールに近づいて、自分との背を比べた。・・・その違いは誰が見ても明らかだった。
「うっ、うるさい!! オレ様はお前みたいにただ背が高いだけが取り柄ではないのだ!!」
「殿下それ本気で言ってます? こうみえてもあたしの背は女の子の平均身長よりちょっと低めだと思うんですが。それに背の高さだったらフロンちゃんの方がでかいですし」
「・・・う゛」
ラハールにズバズバと言いたいことを言うエトナ。そして何も言えなくなってしまうラハール。今更ながらに主従関係があるのかどうかが怪しくなってくる。
「まぁ・・・たま〜に背が小さい男の子っていますけど、それにしたって殿下は異常に小さ―――って・・・アレ? 殿下?」
エトナがさらなる追い討ちをラハールに言おうとしたが、気がついた時にはラハールは目の前から消えていて、

「ハーッハッハッハッハ! 見ろエトナ! 貴様より高いぞ!!」

上の方からラハールの声が聞こえてきたのだった。



「・・・殿下、何してるんですか」
エトナは思わず聞いてしまった。
何せラハールは階段を数段上がり、そこでお得意の高笑いをしていたからだ。
「見てのとおりだ!」
「いや、わかりませんって・・・」
そしてラハールの台詞に素早くツッコミを入れるエトナ。
「つまりだな、いつの日かオレ様はお前より目線が高くなってやるという意味だ! 丁度いまのようにな!」
「いまのように・・・って、殿下が段差の力を使ってあたしよりも目線を高く見せている状態のことですか?」
「そうだ!」
自信満々に答えるラハールにエトナは本気で、
「・・・ぷっ。あはははは!!殿下、バカにも程がありますよ」
大笑いをした。それでこそお構い無しだった。
「なんだとっ!?」
もちろんそれに怒るラハール。が、それは逆効果だったらしく、
「だってそうじゃないですか。あたしよりも目線が高い位置になりたいからって何もそこまでしなくても・・・。ぷっ・・・くく」
再びエトナを笑わせるはめとなった。
「オレ様にとっては重大なことなのだ! いいかエトナよ! オレ様はいずれお前よりも視線を高くし、2度とそのようにオレ様を小さいなどと言わせんようにしてやる!」
しかし、ラハールは諦めずに宣言をした。それは―――生きていれば必ず訪れる未来の話で―――・・・
「いずれ・・・いずれですか・・・。そんな日が来ればいいですね〜殿下?」
「来るに決まっているだろうが! その時はお前を地獄の底から後悔させてやるからな。覚悟しておけ!」
ラハールは数段下にいるエトナを見下ろす。
「・・・まっ。ちょっとは楽しみにしておきますよ。叶うといいですね〜。殿下のその小さな願い」
そしてエトナは声高らかに未来を宣言しているラハールを見上げ、微笑した。
「叶えてやる。絶対にな!!」
それを見たラハールも、ニヤリと楽しそうに笑うのだった――――――。




−あとがき−
あっ・・・えっと・・・ラハエト・・・??(ぉぃ
何か珍しくほのぼの系というかバカな話というか・・・(←酷
管理人の周りでは、高いところに上がって「高いぜ」的な展開がオフでも結構あったり・・・(笑)
そういえば初めてラハール達の身長がわかった時は衝撃を受けたものです。
なんせラハールの背が、プリニーorサーズディとあまり 変 わ ら な い ! !(゜△゜)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。





2009/04/26