もし・・・あの時、あたしを受け入れてくれなかったら・・・・・・




もし・・・あの時、あたしを許してくれなかったら・・・・・・




あたしは、どうなってたんだろう・・・・・・?



ありのままを受け止めてくれた人



「殿下ー。ちょっといいですかー?」
部屋の中に響く元気な声。
「何のようだ?エトナ?」
その声に答えたのは、この魔界の王、ラハールだ。
「いえ・・・ちょっと気になって聞きたいことがあるんですよ。」
「聞きたいこと・・・だと?」
「はい。」
顔をしかめ、エトナを見るラハール。
「殿下、もしあたしが殿下が望んでいるような、魔王に絶対服従の家来だったらどうします・・・?」
何気ない顔で聞いたエトナだったが、この台詞を聞いたラハールはもちろん、
「何をたくらんでいる・・・?」
毎度のことながらエトナを疑う。
「何もたくらんでいませんって。ただ、本当に気になったんですよ。」
「だからそれが怪しいと――」
ラハールが再びエトナに問いかけようとしたが、
「・・・・・・魔王に絶対服従どころか、あたしは殿下の命狙ってるじゃないですか。そんな殿下が理想とする家来とはかけ離れているあたしを何で家来として見ているのか不思議で。」
エトナがラハールの言葉をさせぎり、自分の考えを言った。
「・・・・・・」
無言でエトナの言葉を聞くラハール。
「それに毒殺しようとしたし、殿下を利用しましたし・・・さらには家来をやめて魔神になって魔王になろうとしたんですよ?まぁ、やめたのは殿下が原因ですけど・・・」
最後の言葉でエトナは、チラッとラハールを見た。
「う゛・・・!あの時の話はもういいだろうが!そっ、それよりもオレ様がお前を家来と見ているのは、前に言ったとおり魔王にはお前のような野心を秘めた家来が適任だと言っただろうが。」
照れくさそうに言うラハール。その頬は少し赤かった。
「殿下・・・」
ラハールの言葉に微笑むエトナ。
「それに・・・・・・お前はお前だ。今さらオレ様に忠実な家来になったとしてもそれはオレ様が知っているお前ではない。」
「・・・・・・」
今度はエトナが沈黙した。
「・・・オレ様が知っているお前は・・・隙があればオレ様の命を狙い、さらには魔王の座も狙うとんでもないやつだ。」
呆れたような嬉しいような複雑な表情でラハールは、ふん、と鼻を鳴らした。
「だが、それでこそお前だ。オレ様は・・・・・・今のお前がよい。」
最後の方は、誰でも聞こえないぐらい小さな呟きだった。
そして、赤かった頬がさらに赤くなり、それをごまかすようにそっぽを向く。
「・・・もう殿下ったら相変わらず素直じゃないんだからぁ!」
そんなラハールのぶっきらぼうな言葉に、全てわかっているがごとくケラケラと笑うエトナ。
「なっ、何がおかしいのだッ!!?」
「全部ですよ。ぜ・ん・ぶ・♪」
「っ・・・!貴様・・・!人に言わせるだけ言わせといて・・・!!」
顔を真っ赤に染め、ギロッとエトナを睨むラハール。だが顔が赤いためまったくもって怖くない。
「まぁまぁ。・・・それにあたしだって同じようなこと思ってたんですよ?」
「何・・・?!」
エトナの衝撃発言に今度は驚くラハール。
「あたし、なんていうか殿下といると落ち着くんですよねー。それって、あたしがあたしらしくできる。ってことなんでしょうかね?・・・って殿下聞いてます?なんでそんな顔赤いんですか?熱あります?」
「うっ、うるさい!!」
エトナがラハールの額に手を置こうとした瞬間、その手を払いのけたラハール。
「でも、なんかあたしがさっき言った『殿下といると〜』の言葉を聞いた瞬間、硬直して顔赤くなって――」
「とっ、とにかくだ!二度とそんなくだらん質問などするな!そしてさっさと仕事に戻れ!!」
それ以上言われたらたまらんばかりと、ラハールはエトナの言葉をさえぎった。そしてエトナは、
「えっ?あぁ・・・はい。わかりましたー。じゃ、殿下失礼しましたー。」
慌てて自分を部屋から追い出そうとするラハールをエトナは不審に思いながらも、部屋を出たのだった―――。



(・・・・・・いったい・・・なんだこの気持ちは・・・!)
エトナが部屋から出て行った後、ラハールは一人で考えていた。
(エトナに・・・一緒にいると落ち着く。と言われた瞬間・・・顔が熱く・・・)
先ほどのできごとを思い出し、再び顔が赤く染まるラハール。
「・・・えぇい!!考えてもわからん!オレ様は寝る!!」
最後の言葉はいつの間にか声にでており、ラハールは無理矢理忘れようと自分の寝床に向うのであった。



「まさか殿下の口からあんなことが聞けるなんてねー・・・」
一人、自室に戻ったエトナはラハール同様、先ほどのことに関して考え事をしていた。
「でも・・・ちょっと嬉しかったな・・・・・・」
天井を見上げ、微笑むエトナ。そして自分自身に言うように、



「なんせ・・・ありのままのあたしを受け止めてくれたから・・・・・・」




−あとがき−
さて、やってきました。『あとがきで内容の意味を説明しよう。』というこの時間が・・・!(あ゛)
今回のお題は、共に生きる5題のNo.03のありのままを受け止めてくれた人 です。
これを見た瞬間、即座に「エトラハだ!!」と叫びましたとも・・・!(←
最初の文の、「受け入れ〜」はマデラス事件(?)のことを言っています・・・よ?(何故疑問系)
で、「許して〜」の方はディス2のことで・・・すぜ!(そしてその間はなんだ)
そして、そのことを知ったうえでラハールってばエトナと一緒にいるわけで・・・。
ってことはこのお題にピッタリじゃんかよ!むしろこれはこの二人のことだろう!!と、なんの迷いもなくエトラハにした次第であります(中身はエトラハエトっぽいけどっ・・・!(ぁ)
あっ、ちなみにエトナが言った「落ち着く」ってやつ、実は自分が歯医者に行った時に見ていた雑誌に、
『男はこう言えば貴方に落ちる! 男性100人に聞いた女性に言われて嬉しい言葉!』
と、書かれていて、これを貰いました(いろんな意味で待て)
「○○君いると落ち着くんだよね・・・」と言うと男性は「オレって大事な存在?」と思わずドキドキするそうです。女性の方必見ですぜ!!(待)
まぁ、ラハールがそう思ったのかどうかは別として、嬉しかったってことで(逃(
っと、これは余談なのですが今回の背景であるツバキの花。
花言葉は『気取らない美しさ』らしいですよ!(←
これってエトナっぽくね・・・?みたいな感じで、うまく言えませんが言いたい意味が伝わったのならば嬉しい限りですv(笑)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。




2008/05/04