意地と優しさ  後半



「うっ・・・ここ・・・って・・・あたしの部屋・・・?」
自室で目を覚ましたエトナ。
「・・・でもたしか・・・あたしは殿下と戦っていて・・・それで・・・」
「オレ様に攻撃しようとした時に倒れたのだ。」
「・・・殿下・・・」
エトナのベッドの近くにあるイスに座り、エトナを見つめるラハール。
そんなラハールに対してエトナは、
「あたし、何時間ぐらい寝てました?」
何食わぬ顔で質問をした。
「・・・3時間ぐらいだ。」
「結構経ってますねー。やっぱり熱が高かったせいなんですかね?」
まるで他人事のように苦笑するエトナ。
「このっ・・・・大バカ者が!何故戦った!?何故オレ様に言わなかったのだ!!?オレ様がどれだけ・・・!」
そんなエトナの態度に大声で怒鳴るラハール。
「・・・殿下・・・・頭に響くんでちょっと声のトーン下げてくれません・・・?」
顔をしかめながらラハールに言うエトナ。
「うっ・・・。スッ、スマン・・・。だけどお前・・・!」
「・・・・・・わかってますよ。倒れたことは謝ります。だけど言わなかったことに対しては謝れません。」
「なっ・・!」
「だって殿下にこのこと言ったら絶対「オレ様の家来のくせに風邪などひきおって!」って言うじゃないですか」
「う゛・・・・」
「わざわざイヤなことを言われるのを知っていて、言うバカなやつはいませんよ。」
ベッドに横になりながらラハールを見るエトナ。
そして正論を言われ口ごもるラハール。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
そこから会話が途切れ、しばし沈黙が流れた・・・。



「・・・・・・オレ様の・・・オレ様のせいなのか・・・?」
「・・・殿下?」
「オレ様のせいでお前は倒れたのだろう・・・?オレ様が頼りないから・・・お前も・・・・・・母上も・・・」
普段の偉そうな態度が嘘のようなくらい物静かなラハールの声と様子。
そんなラハールを見ていたエトナは、
「殿下。何らしくないこと言ってんですか。だいたい、あたしは元々殿下なんか頼りにしてませんって♪」
何気なくとんでもないことをサラリと言い放つエトナ。
「・・・一言、余計だ・・・」
バツが悪そうに悪魔特有の赤い瞳でエトナをチラッとみたラハール。
その頬は少し赤く染まっていた。
「・・・それでこそ殿下ですよ。いつも魔王ぶってるけど実は全然ダメな魔王が殿下ですよ♪」
無邪気に笑うエトナ。
「お前、オレ様が黙って聞いていれば言いたい放題いいやがって・・・!」
「あっ、もう一戦いきます?今度は最後までちゃんと――」
「それはもう言い!!」
「え?いいんですか?だってこのままじゃモヤモヤしません?」
ラハールの意外な言葉を聞き、虚をつかれるエトナ。そしてラハールから返ってきた言葉は意外なものだった。
「・・・・・・自分の体のことを考えろ・・・」
その声は小さく、周りが静かでなければ聞こえないほどだった。
「・・・殿下、あたしのこと心配してくれるんですか?」
「・・・!なっ、なんのことだ。オレ様は何も言っておらん!!」
頬を染めて自分をみるエトナに、自分で墓穴をほったことに気がつき慌てて否定するラハール。
「とにかくさっさと治してオレ様のために働くのだ!!」
エトナに向かい大声で叫んだかと思えば、ラハールは立ち上がりドアを開けた。
「あれ?殿下どこに?」
「散歩だ散歩!!」
ラハールは問いかけるエトナに振り向きもせず、大きな音をたててドアを閉めた。



「・・・散歩・・・ね。顔が赤いのバレバレだっつの。」
一人残ったエトナはポツリと呟いた。エトナの位置からは後ろを向いたラハールの頬が見え、赤くなっているのに気がついたのだ。そして・・・

「殿下の・・・バーカ。」

今はこの場にいないラハールに向かい、ふっ、と微笑んだのだった―――。




後日。

「だーかーらー!さっきから言ってるじゃないですか!あたしは殿下のためになんて働きませんって!!」
「キサマ、それでもオレ様の家来か!つべこべ言っている暇があったらさっさと働け!」
「嫌ですってば!!」



「いやー・・・今日も平和ッスねー。」
「まったくもってそのとおりッスねー。」
すっかり風邪を完治したエトナはいつもどおりラハールと言い争っていた。
そしてそれを遠くからみていたプリニー達は何事もないように呟いたのであった。




−あとがき−
ってことで初の前・後編小説でした。
本当は続き物にする気はなかったのですが諸事情により二つにわけました。
小説の長さの加減がわからない・・・!(待)
・・・に、してもなんだこのシリアスとも甘いとも言えない微妙な内容は・・・(まったくだ)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。




2008/05/06