bean



「殿下ー、豆まきしましょうよ。豆まき」
「・・・豆まき・・・だと?」
「はい。今日は人間界で“節分”って日らしいですよー。だからあたし達もせっかくだからやってみようかと思って」
「なぜオレさまが人間どもの行事をやらねばならん。プリニーどもを相手にすればいいだろうが」
「チッチッチ・・・殿下、甘いですねー。話によると節分って行事は豆を投げる人と投げられる人・・・つまり“鬼”役にわかれて生きるか死ぬかの戦いをするらしいです」
「生きるか死ぬか・・・だと?」
「はい。鬼役の人に思いっきり豆を投げつけるらしいです。そりゃもう思いっきり。顔面に当たろうが怪我をしようが死のうが関係なく。で、せっかくだから殿下にもこの楽しい行事を体験して欲しくって声をかけた訳です」
「・・・・・・・・・」
「・・・殿下ー? 聞いてますー? あまりの恐ろしさに声がでなくなっちゃったんですかー?」
「フッフッフッフ・・・・・・ハーッハッハッハッハッハ!!」
「あ゛−・・・殿下?」
「気に入った・・・気に入ったぞその行事! オレ様も参加してやる!」
「・・・わかりましたー。殿下も参加ですね。何だか楽しくなりそうですね〜・・・?」
「・・・貴様、何か楽しんでないか? 何やらイヤな予感がす―――」
「まぁまぁ殿下、そんな細かいことを気にせず、殿下は豆を投げる役か鬼役かどっちにします?」
「・・・? オレ様はもちろん豆を投げる役だ。エトナ、お前は鬼役をやれ」
「えー? なんであたしが鬼役なんですかー? 殿下、絶対本気で投げるじゃないですか」
「当たり前だろうが。それがルールなのだろう?」
「そりゃまそうですけど・・・でも殿下、いいんですか?」
「何がだ?」
「殿下が豆投げる側になっちゃっていいのかなーって」
「? どういう意味だ?」
「簡単な話ですよ。豆を投げられて忌み嫌われている鬼ってのはつまりは悪人ってことじゃないですか。そして豆を投げる人は平和を願って悪人である鬼を追い払うために豆を投げるんですよ? つまり豆を投げる人は言わば善人ってことです。殿下はそれでいいんですかー? 魔王ともあろうお方が善人側で」
「なっ・・・」
「あっ、別にあたしは構いませんよ〜? それに殿下がこのまま豆投げる側になってくれればあたしが悪魔として殿下より上だってことにな―――」
「待て! やはりここはオレ様が鬼役をやってやろう!」
「・・・ホントですか?」
「あぁ。本当だ」
「殿下が鬼役であたしが豆を投げる役・・・。これでいいんですね? もう変えられませんよ?」
「別に変える気などない。それよりもさっさと豆まきとやらを始めるぞ」
「・・・わかりました。それじゃあ殿下、覚悟してくださいね・・・?」
「・・・・・・まっ、まてエトナ・・・何やらお前から妙な気配というか殺気が感じられ―――」
「気のせいですよ。気のせい。あたし、別に何もたくらんでなんていませんし・・・」
「うっ、ウソをつけ!! あきらかに何かおか―――」
「問答無用!! 鬼はー外ー! 殿下はー外ー!! ガキンチョ魔王は外ー!!」



「機嫌直してくださいってー殿下ー。ほんの出来心じゃないですかー」
「出来心で死にかけてたまるか!! そもそも貴様、最初っからオレ様に豆を投げるのが目的だったのかっ!!?」
「えー? そんなわけないじゃないですかー。そもそも鬼をやりたいって言い出したのは殿下だし」
「ぐっ・・・! たっ・・・たしかにそうだが・・・・・・だっ、だが途中からお前が善人やら悪人やらをどうのこうのと・・・」
「あっれー? 責任転換ですか殿下ー? いくら悪魔といえど魔王が責任転換しちゃいけないと思いますけどー?」
「う゛・・・」
「ってなわけで殿下、なんだかんだいいながらも豆まき楽しかったですねー」
「・・・それは貴様だけだろうが」
「ぜひ来年もやりましょうよ♪」
「絶対やらんっ!!!」




−あとがき−
ラハール達悪魔にとって節分は鬼ではなく悪魔なのかなー?って思っていたらいつの間にかできたネタです(笑)
本当は4コマ漫画やらショート漫画やらにかこうとしていたのですが、小説の方がイメージしやすかったので、
思い切って解説なしの会話オンリーに。
やっぱ短くなる分伝えにくくなりますね・・・(苦笑)
ラハールとエトナだったらきっとこんな会話を繰り広げながら豆を投げ合うんだろうなぁとか思ったり・・・w
やっぱここはラハールよりエトナの方がいろいろと上だってこと・・・で(笑)

他、どうでもいい余談なのですが管理人が育った地方では『豆』ではなく『落花生』を投げるんですよね。
何やら寒い地方の県は『落花生』らしいです。とりあえず、仲間の県がいてよかった(笑)
時々、文化の違いに驚いたり感心したりする管理人でした(は)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。





2009/02/03