「アルティナちゃん! 今日は何の日か知ってる?!」
「きょ、今日・・・ですか・・・? えぇと・・・特に思い当たるイベントはなかったと思うのですが・・・」
迫力満点のフーカの形相と声に少し引きつりながらも、頭の中で季節的な行事のことを考え答えるアルティナ。

―――暇があり話題があればアルティナ、フーカ、デスコといった女の子同士が集まって、「あの男性がかっこいい」だの「あの二人怪しくない?」などのガールズトークが繰り広げられる時がある。そんな中、今回のガールズトークは開始直後フーカがいきなり声を荒らげてアルティナに質問をしたのだ。

「今日はねー・・・とーっても素敵な日なのよ!」
「素敵な日・・・ですか?」
「フッフッフ・・・そう・・・それはね――」
今日が何の日か知らず、首を傾げるアルティナを見てフーカはニヤリと不敵に笑い、十分に間をおいてから言い放った―――。

「キスの日! なのよ!!」

これは―――
全てが自分の夢だと思っている少女、風祭フーカの偏った知識によってもたらされた出来事であった――――――。



May 23rd -Prologue-




「き、キスの日・・・ですか?」
「そう! キス! キスよ!」
言い慣れていない直接的な言葉に少し頬赤く染め、照れながらも再びフーカに聞くアルティナ。そんなアルティナとは対照的に興奮し、別の意味で頬染めるフーカ。
「詳しいことはわからないけど、とにかく今日はキスの日なのよ!」
「か、変わった日ですわね・・・」
一体その名前には何の意味があるのだろうか・・・とか、何故フーカがいつも以上に興奮しているのか・・・など、疑問はいろいろあったがとりあえず呟くアルティナ。
―――この調子では本日のガールズトークはフーカさんの暴走で終わりそうですわね―――と思い、すっかり聞き側に回っていたアルティナだったが、その時・・・興奮していたフーカからとても聞き逃すことができない一言が発せられた。
「ということでアルティナちゃん! さっそくヴァルっちにこのことを言いに行くわよ!」
「吸血鬼さんに言いに――って、えぇ!!? ふ、フーカさん・・・!? い、今なんて仰いました・・・!?」
フーカのまさかな提案に驚愕するアルティナ。普段の彼女では見られない慌ぶりだった。
「えっ? ヴァルっちに言いに行こうって――」
そして何故アルティナがそこまで慌てているのかがいまいちわからずキョトンとし、淡々と答えるフーカ。
「そ、それですわ! な、なな・・・なんで吸血鬼さんに知らせに行かなくてはならないんですの!?」
自分の聞き間違いではないことを確認したアルティナだったが、慌てぶりは変わらず・・・むしろ逆に増していく。
「だってヴァルっちに教えたらいろいろ面白そうなことになりそうじゃない?」
「お、面白そうなことって・・・一体どういうことですのフーカさん・・・?」
フーカの回答に反射的に答えてしまうアルティナ。
「あっ、やっぱりアルティナちゃんも気になる?」
「わ、わたくしは別に――」
しまった――そう思った時には全てがすで遅し・・・であった。
「ここは素直に認めるべきよ! キスの日の存在を知ったヴァルっちがもしかしたらアルティナちゃんにキスを――なーんてラヴラヴな展開・・・アルティナちゃんだけじゃなくてアタシも想像して期待してるから!」
「なっ・・・!!?」
アルティナは、すごく楽しそうに語るフーカの言葉に再び驚愕し、
「きゅ、吸血鬼さんがわたくしに、き・・・キスなんて・・・そ、そんなこと・・・わたくしは想像していませんわ!」
顔を真っ赤に染め、反論する。だが対するフーカは、
「そんな顔で言われても全然説得力ないわよーアルティナちゃん」
アルティナの反応をみてニヤニヤと笑うフーカ。その顔はとても中学三年生の女子生徒がするような表情ではなかった。そして―――
「そうと決まればさっそくヴァルっちのとこに突撃訪問よ! この時間ならきっと執務室にいるはず! というか居なさいよ! 覚悟ヴァルっち!!」
一体お前は何をしに行くんだ―――というツッコミをされそうな宣戦布告に似た台詞を言いながら―――ちょっとそこまで――といった感じの軽い足取りで、ヴァルバトーゼのもとに走り出すフーカ。
「ちょっ――まっ、待ってくださいフーカさん! フーカさん!?」
そして暴走するフーカを止めようと手を伸ばしたアルティナだったがその手は行き場を失い、なおかつ自分の制止の声が虚しく部屋中に響き渡った。フーカの、この猪突猛進っぷりを見たアルティナは改めて・・・暴走したフーカは誰にも止められない――そう思った。


―――こうして、少女達の短いようで長い一日が始まったのであった――――――。





−あとがき−
キスの日小説、プロローグです
いっ、いや・・・最初はね・・・当日にね・・・両カプ小説UPさせる予定がね・・・
まっ、まぁ・・・ものの見事に無理だったってことで・・・
あっ、あとプロローグは別にしてた方がわかりやすいんじゃないかとかね・・・言い訳をさせてもらうとそのあたりでして・・・(殴
そんなわけで続きます・・・
もう日付イベント関係なくなりますが・・・つっ、続きます・・・ので・・・CP要素はそっちで・・・(逃
さてキスの日―――自分がこの日の存在をしったのはこの日の一週間前くらいでしてまさかこんなおいしいネタの日があるなんてね・・・///
由来はなんともピュアな感じですがおかげでこっちは想像しまくりですよ・・・!(←
来年もやりたいなぁ・・・(−〜−)




2011/05/24