Like? or Love?



「アルマース、これを受け取ってほしいのじゃ。」
頬を薄っすらと染めたサファイアが、小さな小包を手の平にのせてアルマースの方に向けている。
「えっ・・・?姫様これって・・・。」
「うむ。今日は人間界ではバレンタインデーじゃからな。ワシの気持ちを受け取ってほしいのじゃ。」
微笑むサファイア。その表情は実に可愛らしかった。
「もっ、もちろんですッ!!」
サファイア以上に頬を染めて慌てながら受け取るアルマース。
(結婚していてもやっぱり貰えるって嬉しい・・・!ボク、もう死んでもいいかも・・・!)
最高の笑みを溢しながら感動の涙を流すアルマース。
そんなアルマースとサファイアの前に、

「何をそんなに騒いでいる?」

笑いながら泣いているアルマースと距離を置きながらサファイアに話しかけるマオ。
「おお、マオ殿。今日は人間界ではバレンタインデーという日なのじゃ。」
「ばれんたいでー?」
首を傾げるマオ。
「そうじゃ。世話になっておる者に感謝のしるしとしてチョコを渡すのじゃ。」
「ほぉ?では、たかが感謝するだけで何故こいつはこんなに嬉しがっている?」
マオが興味深そうにアルマースを見る。その目は怪しげに輝いていた。
「感謝のしるし以外に、好きな男子にあげるっていう習慣もあるんだよ。はぅ〜。姫様のチョコ、一生大切にします!」
相変わらず感動の涙を流しているアルマース。
「大げさじゃぞアルマース?ワシらは結婚しておる。好きであげるのは当然じゃ。」
「姫様・・・。」
見つめあうアルマースとサファイア。二人の周りには小さなハートが散っていた。
「えぇい!イチャイチャするなら他でやれ!暑苦しいッ!!」
二人を怒鳴るマオ。
「そっ、そんなイチャイチャだなんて・・・。ところでマオは貰ってないの?」
「んっ?何がだ?」
「チョコだよチョコ。」
「・・・?貰っていないが?」
再び首を傾げるマオ。
「おかしいのぉ?先ほどベリル殿が皆にチョコを配っておったのじゃが・・・。」
「ベリルが?」
「うん。ボクや姫様も貰ったよ?それどころか一号生のみんなや師匠にビッグスター様、サルバトーレさんにもあげてたよ。」
「うむ!さすがは不良のベリル殿じゃな。皆に感謝というわけか。」
微笑みあうアルマースとサファイア。
「・・・・・。」
しかしマオは難しい顔し、いつまでもラブラブな二人に背を向けて歩き始めたのだった―――。



(ベリルがチョコを――だと?いや、不良ならば当たり前の行為か・・・。しかし、一号生全員にあげ、我にだけチョコがない・・・・・・?くそっ!なんだこのモヤモヤした気持ちは!)
自分の感情がわからず苛立つマオ。
そんな時マオの目の前に現れたのは、
「アレ?ぼっちゃまじゃないッスか〜。」
「プリニーか。」
「こんちはーッスぼっちゃま。」
マオに話しかけたのは数匹のプリニー。
それぞれ、翼の形をした手には小さな箱を持っていた。
「むっ・・?お前らその箱は・・・。」
「あっ、これッスか?ベリルさんに貰ったんスよ〜。」
「オレらに優しくしてくれるのってベリルさん達ぐらいッスからねー。」
「チョコくれるなんて感激したッス!」
和気あいあいと話し合うプリニー達。
反対に機嫌が悪くなるマオ。
「オレらにくれたってことは、ぼっちゃまはもう貰ったってことッスね。ベリルさんのことだからきっと誰よりも気持ちがこもったチョコをぼっちゃまにあげ――」
一匹のプリニーが期待の目でマオを見たが、
「それ以上言ってみろ。お前を二度と口が開けんように改造してやる!丁度実験材料が欲しかったところだからな・・・。」
瞳を光らせてプリニーを見るマオ。
「ななな、なんでもないッス〜!!」
マオの怪しげな瞳に気がつき、四方八方一目散に散るプリニー達。
「・・・ふん。」
残されマオはどこか不機嫌な様子で再び歩きだしたのだった―――。




「オヤビ〜ン!見てくれでやんす!チョコ貰ったでやんすよー!」

「とっても美味しいでざんすよ!」

「バレンタインデー最高でござんす!」

「魔王さま〜。ベリルさんにお礼言うの忘れたから代わりに言っといてほしいのニャ〜。」

「ベリルさん、友チョコなるものを私にくれたんですよー。」


学園の中を歩いていると、バレンタインデーのことについて言われるマオ。アルマースとサファイアが言ったとおり送り主は全てラズベリルだった。そしてマオは、『バレンタイン』『チョコ』『ベリル』という単語を聞くたびに不機嫌な顔になっていく。

(・・・どいつもこいつも同じようなことを・・・!)
怒りで体が奮えるマオ。そんな時、

「マオじゃないか。こんなところで何してんだい?」
「・・・ベリル!」

怒りの元であるラズベリルがマオの前に現れた。いつも一緒にいる二人は珍しくいない。
「どうしたってんだい?機嫌が悪そうな顔をして。」
「・・・なんでもない!」
理由が理由なだけにラズベリルを直視できないマオ。
「そうかい?なら別にいいんだけど・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

それきり会話がなく、二人の間に気まずい空気が流れた。






数十秒経った時、先に沈黙を破ったのはラズベリルだった。


「・・・・マオ、これやるよ。」
「・・・これは・・・・。」
「姫様が言ってたんだ。今日は世話になってる人にチョコを渡す日だってね。」
「・・・知っている。学園中で大騒ぎだったからな。お前が配ったらしいな。」
「へへっ。知ってんだったら話は早い。そうだよ。アタイが配ったんだ。もちろん狂子や明日禍も一緒だったけどね。」
照れくさそうに笑うラズベリル。
「・・・・・・それにしては我が最後だったような気がしたが?」
「最後?最後って何がだい?」
「わっ、渡した順番だ順番!我は魔王だぞ!一番先に渡すのが当然だろうがッ!!」
「はぁ?魔王だからって関係ないだろ普通。・・・・もしかしてさっきアンタが不機嫌だった理由ってそれかい?」
目を丸くして驚くラズベリル。しかし、それ以上に驚いたのはもちろんマオであって―――、
「・・・・・!へっ、変なことを言うな!何故我がなんの価値もないただのチョコを期待せねばならんのだ!勘違いも程ほどにっ――」
「まっ。100歩譲ってそういうことにしといてやるよ。」
マオの慌てふためく姿が面白かったのか、はたまた嬉しかったのか頬を薄く染めて微笑むラズベリル。
「だから違うと言っているだろうが―――!!!」


その日、魔立邪悪学園の中はしばらくマオの叫びが木霊したそうな―――――。








(マオ、アンタにね・・・チョコを渡すのが遅れたのは――――)

マオが反論する姿を眺めながらふと考えるラズベリル。

(今更渡すのが恥ずかしかった―――。なんて言えるわけがないだろ。それと―――アンタは、不良であるからあげた。って思ってるかもしんないけど―――そのチョコの本当の意味は――――――。)






−あとがき−
マオラズじゃなくってラズマオじゃんか(ドーン)
バレンタインに何か書きたいなぁ。って思ってでてきたネタが何故かディス3でした。しかもマオラズ(内容は反対になってしまいましたが;)
一応、本編クリア後の設定です。結婚後のアルマースとサファイアがラブラブなのか――は、謎ですが(笑)
マオもラハール並に素直じゃない性格なので比較的書きやすかったです(笑)
口調はすげーわかりにくかったですが・・・!(苦笑(ぁ)
とりあえず仲が良い(?)マオとラズベリルが書きたかった。と解釈してくださいw(゜▽゜(逃
あっ、最後のベリルの台詞の続きは―――言わず知れたアノ気持ちってことでっ!(待)
しかし自分が書くとどうも乙女なベリルになってしまいますね;
事実、ベリルってマオのことどう思ってるんでしょうかねぇ・・・ふむ・・・。
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。




2008/02/25