『ミ・ナ・ゴ・ロ・シ・ダ!!』



『マオが暴走するってんなら、そいつを止められるのはアタイだけ!・・・・・・な? そうだろ、マオ?』



『ハナセ! ハナサネバ・・・・・・!』



『へへ、アタイを殺すってか?いいぜ、やってみなよ。だけど、この手だけは決して離さない!この手はアンタとアタイの絆なんだからね!』



『・・・・・・ううっ・・・・・・ハ、ハナセッ・・・・・・!!ベリルぅっ・・・・・・!!』





(・・・・我は・・・我はあの時・・・・・・・・・・・・・。)



スナオナココロ




「ベリル。」
「??なんか用かいマオ?そんな真剣な顔をして。」
マオがココロを開いた(本人否定)祝いとして、チャンプル先生が言ったとおり闇鍋パーティーが開かれた。
各自入れたいものを入れ終わり、それぞれ思うがまま食べていた。興味津々で怪しい具を食べてゆくサファイア。それを慌てて止めようしているアルマースや、微笑みながら食べている狂子と明日禍。そして、意外すぎる具に何も疑問に感じずに美味しそうに食べているチャンプル先生がいた。その中でマオがラズベリルに話しかけたのだ。皆、闇鍋に集中してマオとラズベリルの会話には気がつかない。

「・・・我はお前に聞きたいことがある・・・。」

「聞きたいこと?」
真剣なマオの表情に、ラズベリルは首を傾げる。
まさかマオが自分に質問してくるとは思ってもいなかったのだ。
「いったいさっきからどうしたのさ?」
マオに聞くラズベリル。しかしマオは、ばつが悪そうに、
「・・・・ベリルよ、何故・・・何故あの時、我を命がけで止めたのだ・・・?もしかすると我は・・・・・・お前を殺していたのかもしれんのだぞ・・・?」
自分で言った言葉の重大さに顔をしかめ、心が締め付けられるマオ。
しかしラズベリルは、そんなマオを和らげるように、
「・・・へっ。そんなの決まってんだろ。」
微笑むラズベリル。
「何っ・・・?」
反対に、即答したラズベリルに驚くマオ。
「アタイがアンタの幼馴染でライバルだから・・・さ。」
ラズベリルから放たれた言葉は、昔からよく言っていた台詞だった――。
「バカなっ・・・!そんな理由であんなコトができるはずが――」
「でも結果的にアンタの暴走は止まった。ってことはアンタにアタイは殺せなかったってことだ。・・・アタイは信じてたんだ。アンタが暴走を止めてくれるってね。だからあんなコトができだんだよ。」
何の迷いもなく話すラズベリル。その瞳は真っ直ぐマオに向けられていた。
「だから――また暴走することがあっても、アタイが止めてやる。何度でも・・・な!」
悪魔特有の八重歯を見せながらニッコリと笑うラズベリル。その笑顔は、邪気の欠片もない天使のような笑顔だった。
「・・・・・!」
ラズベリルが見せた意外な表情に戸惑い、照れたマオ。もちろんそんなことは目の前にいる幼なじみには言えるはずもなく―――
「そっ、そんなバカなことがあってたまるか!!我はお前の世話になどならん!そもそもあの時は迷惑だったのだ!なのにお前は変な勘違いをし、わっ、わけのわからんことを言いやがって!!!」
慌てて否定するマオ。その声は意外と大きく、騒いでいたアルマース達にも聞こえた。そのため、マオとラズベリルが二人で会話している気がついた。
「ど、どうしたのマオ?そんな大声だして?」
「っ・・・!なんでもない!!」
キョトンとしているアルマースに向かって叫ぶマオ。そしてそのまま、何かを隠すようにもくもくと闇鍋の具を食べ始めたのだった。



「ねぇベリルさん。マオ、いったいどうしちゃったの?」
「うむ・・・。何やら顔が赤かったような気がするのじゃが・・・?」
アルマースとサファイアがチラチラとマオの方をみながらラズベリルに訪ねた。
「それがよくわからないんだよ。アタイはただ――」
ラズベリルは、先ほどのできごとをアルマース達に話始めたのだった―――。



「マオ。」
「・・・なんのようだアルマース?我は今、この見た感じとてもマズそうな闇鍋が何故うまいのかを研究している最中だぞ?」
マオが具を食べていた時、アルマースが近づき話かけてきた。
「マオ、もしかして嬉しかったんじゃないの?」
「・・・・は?」
アルマースのいきなりの質問に驚くマオ。
「ベリルさんのことだよ。さっきベリルさんから聞いたんだ。マオが何を言ったのかを。」
「なっ・・・!」
「どんなことがあってもマオのことを見捨てないって言ってくれたベリルさんの言葉が嬉しかったんじゃないのかな?同時に、そんなことを言ってくれたベリルさんのことも――。」
微笑むアルマース。
「だからもうちょっと素直になってみたら?せっかくココロを開けたんだからさ。・・・ってマオ聞いてる?」
先ほどから自分の言葉に反応しないマオを不思議に思い、マオの顔を見たアルマース。
アルマースがマオの顔を覗き込んだ瞬間・・・、
「・・・言いたいことはそれだけか?クックック・・・せっかく生き返ったのも無駄だったなぁアルマースよ。我の手でもう一度眠らせてやるとするか・・・!」
「ひぃっ!!?」
アルマースがみたマオの顔は、明らかに怒っていた。
「なっ、なんでもないよ!うん!さっきの言葉は誤解!マオがベリルさんに感謝してるってことは絶対にな―――あ。」
自分で墓穴を掘ったアルマース。
「・・・ほぉ?なかなか言うようになったではないか元・偽勇者。覚悟はいいな?」
「あ・・・はは・・・。」
顔が引きつり、もはや逃れることは不可能だと判断したアルマースだったが、

「何やってんだいアンタ達。マオ、アタイからもアンタに話がある。さっきは聞いてやったんだからアタイの話も聞いてもらうよ?」

間一髪、ラズベリルがマオの怒りを止めアルマースは救われた。
「・・・なんだベリル?話というのは?」
「ここじゃ話にくいからさ、いったん外にでよーぜ?」
「・・・わかった。」
珍しく素直に従ったマオ。
そんないつもと様子がおかしい二人をアルマース達は不思議そうに見送ったのだった―――。




「さて・・・と。この辺でいいかな。」
ラズベリルはマオをつれて屋上にやってきた。
屋上からは魔界特有である赤い月が昇っており、いつもと違う雰囲気に包まれていた。
「いったいなんだ?わざわざこんな場所にきてまで話せねばならない内容とやらは。」
マオはチラリとラズベリルを見ると、そのままその場に座った。
「さっき言い忘れたことを言おうと思ってね。」
マオの隣に座り込むラズベリル。二人とも、まっすぐ赤い月を眺めている。
「言い忘れたこと・・・だと?」
「そうさ。」
赤い月から視線をそらしてマオを見るラズベリル。
「アンタはもう一人じゃない。アタイや勇者、姫様に先生や狂子に明日禍だっている。それにアタイは絶対アンタを見捨てない。」
「・・・・・・ベリル。」
「アタイが傍にいる。アタイはいつだってアンタことを信頼してる。だからたまにはアタイのことを頼ってくれよな?」
部屋で話ていた時にようにニッと笑ったラズベリル。












『へへ、アタイを殺すってか?いいぜ、やってみなよ。だけど、この手だけは決して離さない!この手はアンタとアタイの絆なんだからね!』





(我はたしかにあの時ベリルを殺しかけた―――。)

瞳を閉じると、数時間前のできごとが脳裏に浮かぶマオ。

(なのに―――ベリルは我を見捨てないと言った―――。絆・・・・と言った―――。我はきっとこの言葉に救われ―――。)










「・・・マオ?」
返事がないマオに声をかけたラズベリル。
声をかけられたことで考え事をしていたマオは正気に戻り、
「・・・勝手にしろ。」
無愛想にそっぽ向いて一言いった。
そして、普段の天の邪鬼に戻ったマオを見て安心したラズベリルは、
「あぁ。勝手にするよ。今までだってそうだったんだからね。」
「・・・・ふんっ。」
いつもと変わらない二人の会話―――。
照れを隠すために空を見上げているマオと微笑むラズベリル。
そんな二人を見守るかのように、空には赤い月が輝いていた―――――――。






−あとがき−
本編第七話終了後のマオとラズベリルの会話――を想像して書いてみました。
あんなことがあったのに、何も変化がないのは怪しい!と思って、勝手にマオラズ的な要素があるはず!とも思い込み、できたのがコレ。
マオラズなんだかラズマオなんだか、はたまたCPでないような気がする・・・。
そして相変わらず文にまとまりがなく終わりとかすっげ微妙・・・orz
後、アルマースいろんな意味でゴメン・・・(苦笑)
だけどああいう場合にはアルマースが一番適任な気がするのでつい・・・(つい?)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。




2008/03/09