「マオ、プレゼントは欲しくないかい?」
「・・・プレゼント・・・だと?」
当たり前のように言い放ったラズベリルを怪訝な顔で睨み付けるマオ。ちなみにここはトイレを改造したマオの部屋だ。
「そうさ。プレゼント。アタイがアンタに何かプレゼントしてやるよ」
「・・・何が狙いだ?」
そしてマオは警戒心を逆立てる。
「失礼だねー。アタイが何かするとでも思ってるのかい?」
胸を張ってしゃべるラズベリル。もちろんマオを見上げる形であるので、いまいち迫力がない。
「・・・いつも何かをしているだろうが!」
「? まぁいいや。とにかく明日アタイはアタイに何かをプレゼントしてやるよ!」
マオの言葉に心あたりがないのかラズベリルはキョトンとなった。が、すぐに気を取り直し再びマオに言った。
「明日? 何故明日なんだ?」
すでに諦めたのか、マオは気になったことを聞く。
「それはだね・・・」



プレゼント



「元・偽勇者!!」
ガラッ! と大きな音を立ててマオは凶室に入った。
―――凶室の中にいるアルマースのあだ名(?)を叫びながら・・・。
「ま、マオ?! 一体どうしたの? そんなに慌てて・・・」
マオのいきなりの登場に驚くアルマース。
・・・怯えなくなったのは成長なのか。
「どうもこうもあるかっ! ベリルに変なことを教えやがって!!」
「変なこと・・・?」
首を傾げるアルマース。
「くりすますとやらのことだ!!」
マオは言った。先ほどラズベリルに質問し、返ってきた言葉を。
「えーっと・・・クリスマスのどこが変なの?」
どこが変なのかがわからないアルマースは、ただただ首を傾げるばかりだった。
「他人にタダで物をやることがだ!」
話がいまいち通じないアルマースにイライラするマオ。
しかしそんなマオの態度にも慣れたのか、アルマースは、
「変じゃないって。サンタクロースって人がいい子のためにプレゼントしてあげるって行事だしさ、友達同士だったらプレゼント交換とかする訳だし・・・」
優しく説明をした。
「サンタクロース? それはたしか赤い服を着たじじぃのことか?」
「そうそうその人のこと。なんだ。マオもちゃんと知ってるじゃん」
マオの意外な反応に感心するアルマース。だが、
「サンタクロース・・・夜な夜な他人の家に土足で入り込み、わけがわからん物を勝手に置いていくという、勇者と同じぐらいの図々しさを持つやつのことか!」
自信満々に言い放つマオ。
(微妙に当たっているようで当たっていない気が・・・)
そして先ほどの感心が呆れに変わってしまうアルマースだった。



「それで何故ベリルは我にプレゼントをしようとしている? これもボランティアとやらの一種か?」
話の元を思いだし、マオはアルマースに質問した。
「ボランティアでプレゼントをあげる時もあるけど、ベリルさんの場合は・・・」
答えようとしたアルマースだったが、

「大切な幼なじみにプレゼントをしようとしているのじゃ」

アルマースの隣の席で一部始終を見ていたサファイアが代わりに喋った。
「どういう意味だ?」
「まことに鈍感じゃのう・・・マオ殿は」
「なにっ・・・?」
サファイアの呆れた表情に驚くマオ。
「簡単な話じゃ。プレゼントとはそもそも大好きな人や大切な人に贈るもの。それを大きくしたのがクリスマスなのじゃ。普段から誰かのために働いているベリル殿にとってはうってつけの行事であろう?そしてベリル殿は大切に思っているマオ殿にもプレゼントしようとした。その気持ちに嘘はなく、表も裏もない純粋そのものじゃ」
「なっ、何をわけがわからんことを・・・!」
「たまには素直になってみてはどうだ? マオ殿?」
「ぐっ・・・!」
そして今度は赤面するはめとなった。
「よし決まりじゃ!! 今からベリル殿にプレゼントをするものを選びに行くぞ!
「か、勝手に決めるな! 我は行くと一言も―――」
「善は急げじゃ! 行くぞマオ殿、アルマース!」
「まっ、待ってくださいよ姫様ー!」
「貴様ら話を聞け―――!!!」

こうして(?)サファイアとアルマースとマオのプレゼント探しが始まったのだった―――。



「うーん・・・何がいいんだろうねぇ・・・」
手を口元にあてて悩むラズベリル。
「まったく・・・せっかく何が欲しいのか聞こうとしたのに、アイツはクリスマスのことを聞いたとたんアタイの前から消えやがって・・・」
マオの部屋に訪問したラズベリルはクリスマスのことを教えた。
―――そしてそのことをラズベリルに教えたやつの名前も。
「結局聞けないままだったし・・・一体アイツは何が欲しいんだろうねぇ・・・?」
悩み続けるラズベリル。そんなラズベリルを見ていられなかったのか、
「お姉さま、きっとマオさんは世界中の勇者様達が載っていそうな本が欲しいのでは?」
「もしくは実験道具とか・・・」
ラズベリルを慕う狂子と明日禍が提案した。
「たしかにアイツは年がら年中欲しがっていそうだけどさ、何もクリスマスの時にやるのは・・・。クリスマスってのはもっとこう・・・特別なもんだって聞いたよ?」
アルマースの言葉を思いだすラズベリル。
「でもお姉さま、そうなるとマオさんが欲しそうな物って・・・」
「そうなんだよ・・・それ以外何も思いつかなくてさ・・・」
三人とも顔をしかめて悩む。マオについて言いたい放題言っていることも気がつかずに。
「アイツにプレゼントをすることがこんなにも難しいものだったなんてねぇ・・・想像すらしなかったよ・・・」
がっくりと肩を落とすラズベリル。
「お姉さま、きっと問題は解決しますわ!」
「そうですわ。とにかく手当たり次第いろいろな場所に行ってみるのが一番いいと思います」
「狂子・・・明日禍・・・。そうだね。こんなところで考え込んでいてもしょうがないってことだね!」
「その調子です! お姉さま!」
「よしアンタ達、さっそく調査開始だよ!」
「「はいっ!!」」

元気と期待に満ちた表情でプレゼント探しに向かったラズベリルと狂子と明日禍だった―――。



「これなんかどうじゃ?」
「なかなかいい感じですねそれ。さすがは姫様!」
「プレゼントのことならお任せじゃ!」
「あっ、これなんかどうでしょう?」
「おぉ! なかなかいい目をしておるではないかアルマース!」
「あっ、ありがとうございます姫様!」
サファイアとアルマースが楽しそうに売り出している商品を見て騒ぐ。
だが、
「・・・・・・・・・」
この2人に連れ出されたマオはただただ黙って見ている・・・というか睨みつけているだけだった。
「ねぇマオ、マオは何をベリルさんに贈れば・・・ってマオ?」
「どうしたのじゃマオ殿? 先ほどから黙っておるではないか」
キョトンとするアルマースとサファイア。
もちろんそれに対して、
「・・・・・・貴様らは何をしにきたのだ・・・?」
ドスが効いた声で2人に問いかけるマオ。
「何って・・・マオがベリルさんにあげるプレゼントを選びに・・・」
「そうだそれだ。それ自体にかなりの不満があるが、この際それは置いといてやる。それよりも・・・だ。何やら貴様ら2人は先ほどからやけに楽しそうだが・・・?」
「えっ・・・? そっ・・・そうかな・・・?」
「きっとマオ殿の気のせいじゃ気のせい。のぉ? アルマース?」
「そっ、そうですよね姫様! マオってば何を言って・・・」
「・・・どうやら平和ボケになったようだなアルマースよ・・・?」
「まっ、マオ・・・?!」
ニヤリと不敵に笑うマオに背筋が凍るアルマース。
「我のことを無理矢理連れ出したあげく、2人でイチャイチャと・・・はた迷惑もいいところだ!!」
「まぁまぁそう急ぐでないマオ殿」
「誰がだっ!!」
「ワシらとてちゃんと考えておる。ほれ、これなんかはベリル殿にどうじゃ?」
サファイアは話をそらし、マオに女の子ならば欲しがるようなものを見せた。が、そこは悪魔のさがなのか、はたまたマオであるがためなのか、
「そんなつまらんものを選んでどうする。そもそも我はまだベリルに何かやるなどと言ってな―――」
「おぉ! あっちに何か良い物がありそうじゃ! 行くぞ! アルマース、マオ殿!!」
「おっ、おい! だから人の話をっ―――」
「あ・・・はは・・・」
今だに抵抗を続けるマオと、諦めたのか苦笑しかできないアルマースをずるずると引っ張っていくサファイアであった―――。



−クリスマス当日−



「マオー、いるかい?」
ぴょこっ。とマオの部屋に顔をだしたのはラズベリル。
「・・・・・・」
しかしラズベリルの声を聞いてもなんの反応もないマオ。
「マオ? アンタいるなら返事ぐらいしろって。それが礼儀ってもんだろ?」
応答があろうがなかろうが関係ないらしいラズベリルは、堂々とマオの近くに歩み寄り再び語りかけた。
「・・・・・・なんのようだ?」
そしてラズベリルが近づいてきたのがわかり、ついに声をかけるマオ。しかしその声は緊張しているようだった。
「なんかいつもと様子がおかしくないかいアンタ? まぁとにかくさ・・・今日は昨日言っていたクリスマスってやつだよクリスマス! ってことでこれはアタイからのプレゼントだよ!」
ラズベリルはマオの様子が変なのを気に留めながら、四角い箱に綺麗にラッピングされたプレゼントをマオに見せた。
「まっ、まぁ・・・貰える物は貰っておいてやる」
「相変わらず態度がでかいねぇアンタは・・・。ところでさマオ、アンタさっきから何を隠してるんだい?」
ラズベリルがマオの部屋にきてからなのか、先ほどから何かをラズベリルの目に触れないよう隠しているマオ。
「なっ、なんの話だ・・・?」
しかしあくまでも隠し通そうとするマオ。すでに意味はないだろうに。
「隠したって無駄だよ! 諦めて見せな!」
「おっ、おい!」
素早くマオの背後に回りこみ、マオが隠し持っていた物を取った。しかしそれを見たラズベリルは、
「これって・・・プレゼント?」
驚愕した。ラズベリルがマオから取り、手に持っていた物はピンクの袋に綺麗に蝶結びをされているプレゼントだった。
「こっ、これは違うぞ! 断じてお前にやる物ではなく・・・っ!」
顔を赤くしながら必死に否定をするマオ。だが、ラズベリルはそれどころではないらしく、
「・・・これ・・・・・・アタイにくれるのかい?」
マオにプレゼントの詳細を聞く。が、対照的にマオは大慌てで、
「そっ・・・それは・・・・・・」
この場をどう乗り切ろうかで必死だった。そして、とっさに出てきた言葉が、
「あっ、アルマースと姫様があまりにもうるさかったから買ってやったのだ! 誰かにやろうなどとは思っていないっ!!」
半分本当で半分嘘(?)な説明だった。
「マオ・・・」
「だっ・・・だがっ・・・、いつまでもここにあると邪魔で仕方がない。ほっ、欲しければ勝手に持っていけ!」
そしてぶっきらぼうに言い放つマオ。
「・・・・・・そうだねぇ・・・せっかくだから貰っといてやるよ。アンタからのクリスマスプレゼント」
「だっ、だから違うとっ・・・!」
「とりあえず礼を言っとくよ。ありがとな、マオ」
「・・・ふんっ・・・」
頬を赤く染めながら、笑顔でマオにお礼を言うラズベリル。そしてラズベリルのとても嬉しそうな顔をみたとたん、何も言えなくなってしまったマオだった。

「そうだマオ、いい忘れてたんだけどさ・・・・・・」
「・・・なんだ?」



「メリークリスマス」




−あとがき−
まず、季節はずれのクリスマスネタを失礼します;;;(←過ぎてから書き始めた)
そんでもって、拍手の方で『マオ→←ラズの甘い小説』というリクエストがきていたので書いてみました・・・。
季節ネタですみまっっせんっっ!!
そして過ぎててすみませんっっ!!!(土下座)
うまい具合にリクエストに応えられていればいいのですが・・・(゜v゜(ドキドキ)
こっ、こんな管理人が書く小説でよければまたリクエストしてくださいまし(><)
ってか・・・相変わらず中途半端な終わりかた・・・だorz
で、マオのセリフがすげー久々だったので微妙に違ってたりするかもです(^^;)
なんで変なとこがあったらちょくちょく直していこう・・・(あ)
それで・・・肝心のプレゼントの中身が何か・・・なのですが・・・ごっ、ご想像にお任せしますっ!(逃)
ではでは、読んでくださった方ありがとうございます。少しでもお楽しめたならば幸いでございます。





2009/01/02